周易裏街道(全2冊) アウトレット 仁田丸久 東洋書院

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本体は良好ですが、外函に少し汚れがあります。
本書1、029頁の「周易裏街道あとがき」を書かれておられる故紀藤元之介氏にして、次のような思いを書かれている。ちなみに氏は加藤大岳師の東の「易学研究」と並んで、長らく西の「実占研究」を刊行されていた方である。「『周易裏街道』」が始めて発行された頃は何といっても私も若く、仁田先生の言っておられることが、●奇想天外●に思え若干●荒唐無稽の説を為す人●という感がし、正直のところ●付いていけない●と思ったものです。が、「時」は有難いもので、10年経って、配本の都度ゆっくり目を通してゆく内に、むかしそんなふうに思っていたことが愧かしくなってきました。どうしてどうして深いものです。●これは天下の奇書だ!●と目を見張り、膝を打って感嘆し、次回の配本を待ち遠しく思うようになりました。」 あの紀藤氏にして、始めは本書の真価がお分かりにならなかった、ということであるからいろいろ易書を読み漁った方々の中に、本書の価値に思い至らない方がいてもおかしいことではない。「時」が解決する問題である。ただ本書は限定280部の発行であるから欲しいと思った時にはもう無いものと覚悟しなくてはならない。その意味で本書は、まず分かっても分からなくてもお手元に置きなさい、というのが老爺心ながらのお薦めなのである。 前置きが長くなってしまった。  本書は「仁田丸久述」とあるように、昭和30年11月1日から、ご自宅の諏訪山房にて2年もの長い間講述された講義を筆録編集したものである。いわゆる講義口調になっているのはそのためであることを了承されたい。
 一通りそれらの講述に目を通した者として一言述べさせて頂くとすれば、多くの講述中、この『周易裏街道』こそが白眉である、というのが正直な思いである。勿論他のものは価値が低いといっているのではなく、講述の皮切りである本書でかなり良いものを出されている、ということである。 本書で「仁田易」に開眼されて●これは!●と思われて余裕のある方は、是非他の講述にも挑戦されたらよろしいと思う。たとえ市場に出回るモノが少なかろうと、心から出会いを望んで準備ができた方のところには、必ずや縁あって届けられることになると信ずるからである。 氏その人について語らねばならない。氏は明治33年のお生まれで、昭和48年に74歳で亡くなられた。 小学生の時から親しんだ英語を生かして、長らく商社に勤務され、国際貿易に従事されたことが講義の端々から伺えると共に、易とその周辺にある「術」をお仕事に生かしたことがエピソードとして語られていることは興味深い。
「一生を費やして●易●の本当の意味を知ろうとしてきた。」と述べる氏の言を、本書は裏切らない。「易」について素人ながらいささか書物を漁ってきた解説者の私でさえ、本書の前には素直に脱帽せざるを得ない。「易」の擁する世界の奥深さ、広さを本書ほど垣間見せてくれる書物というものを他に知らない(あるいは有っても筆者自身が未熟なため未だに目に入っていないのかも知れないが)。恐らく本書に比肩する易学書は本場の中国にも無いであろう。 それだけ仁田氏は「易」の核心を掴んでおられたということである。当分の間、氏の『周易裏街道』を超えるモノは出ないであろうとしか言いようがない。 氏は「八宗兼学」の人である。中国哲学における易学書の解釈には全く見られない観点から易を論ずる。この「八宗兼学」が並のものではない。「20歳前後の弱冠から約10年間、私は繰り返し新・旧約聖書を読み継いで参りました。」(1031頁)この経験が本書中に生かされている。中国の歴史が生んだ「易」が何で「聖書」と関係があるのか?そういう疑問をもつ方もおられるかもしれない。そのような方には「旧約聖書」の「申命記」の「申命」が「巽為風」の彖辞「重巽以申命」から来ていると伝えればまずは足りよう。「聖書」と「易」をどう関連付けて仁田氏が読んでいるかは、それこそ本書を読んでの楽しみにとって置こう。「易」を「霊術の書」として読む氏の立場はユニークとしか言いようがない。しかし筆者自身の体験に照らしてもそのような読み方に納得がいくが故に、氏の読み方をいやでも認めざるを得ないのである。 筆者があることを占って「答え」(卦)を得た時、余りにも正鵠を得ていて、ただ「易経」という本の上での答えとは思えず、「易経」を借りて聖なる存在が「ワシは何でも知っておるぞよ。」という感じでのたまわれた感じをしたことが何度もあった。その時の何ともいえない感じというものは味わったことのある人ならお分かり頂けよう。
 氏の八宗の一つが古神道「天行居」であり、その主宰者であった友清歓真の霊術を抜きにしては本書について語れないが、関心のある方は『友清全集』について見られたい。 氏の蘊蓄は様々な領域にまたがる。フロイト、ユング、アードラー、ソンディ(67頁ではスツオンデイと表記されている)等の深層心理学に多くを学んでいるがそんなのは序の口というべきか。 現在でいう「精神世界」のあらゆる分野にわたって氏は目を通されており、それらのエッセンスを「易」を読み釈く上に生かされておられるのには、何ともはや感嘆する以外にない。 氏の蘊蓄のほどは、各卦の講述そのものに当たって味わって頂ければ一番よいので、ここではそれ以上述べる必要はないであろう。 最後に贅言を費やすかもしれないが、「仁田易」の特徴というか、売りについて言及したい。「易」が、朱子の言う如く、まず第一に「占筮の書」であることは、疑いの無いところであろう。しかし我々が右に行こうか、左に行こうか、本当に迷った時に占って「易」に答えを求めるだけでよいのであろうか?「易」はただの「占筮の書」なのであろうか?「易」は我々の人生を豊かにするために、異界よりこの世にもたらされた「霊術の書」というのが、仁田氏の言である。 第41講山沢損で、氏は語る、「今日からでも応用できることで、しかもこれを実行したら、財といわず、健康といわず、精神力といわず、すべてにおいて恵まれて、儲かって儲かってしょうがないという事を話していきたい。」(485頁) ただし、儲かるための条件が幾つかあって、具体的なことは本文を読んでのお楽しみにしておくが、敢えて一つだけ記すとすれば、「儲けるためには、夫妻が性的に円満なことが大切である。」(499頁)これを読むと、やはり仁田氏は「易」のもつ核心を掴んでいたなア、と思わせる。

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